一年を通して楽しめる観光梅林を目指して
梅農家さんを中心に農泊推進協議会を発足
生梅の生産量が全国第2位の群馬県には、「ぐんま三大梅林」と呼ばれる3つの梅林があります。開花時期はあたり一面に紅白梅が咲き誇り、春の香りに包まれ、観光梅林として約60年の歴史があります。
梅の花が開花する2月中旬~3月下旬には「秋間梅林祭」が行われ、多くの観光客で賑わいを見せますが、観梅シーズン以外の人出はまばら。そんな中、「一年を通して人々が回遊する梅林にしたい」と考えた梅農家さんたちが立ち上がりました。農家さん10名で構成された「あんなか秋間梅林農泊推進協議会」を、 2018年7月に発足。誘客に繋がる新たな取組をスタートさせました。
原動力は「秋間梅林が好きだから」
梅農家を営みながら協議会の一員として活動
「協議会を発足後、農作業などを体験するモニターツアーを年4回、計8回実施しました」と話すのは、同年(2018年)4月に農業高校の教員から梅農家に転職・就農を開始した黛青葉さん。
青葉さんの就農のキッカケは、「秋間梅林が好きで、ここを守りたい」という思いからでした。農業高校での授業を通して秋間梅林に係わり、梅や農家の人々の魅力に触れるのと同時に、高齢化や後継者不足が進んでいる現状も知ることで、その思いが強くなっていったそうです。現在も、当時の思いのまま、農家を営みながら協議会活動を行っています。
そんな青葉さんは、協議会発足後に行った「モニターツアー」について、こう話します。
モニターツアー参加者からの声が
新しい取組や現状の問題解決の鍵
「1年目は県外の方、2年目は前橋や安中の方を対象に、梅もぎや剪定、梅ジュースづくりなど時季ごとの作業を体験していただきました。皆さん、とても楽しまれていましたね。特に県内の方は、ふるさとの新たな魅力を発見されたようでした」と、青葉さん。
このモニターツアーでの経験や参加者のアンケートが、今に活かされているそうです。
「『梅の商品をもっと食べたい』、『梅林内にこれがほしい』など、多くの意見をいただきました。これを機に、梅の商品の開発や、案内看板の設置などを行いましたが、まだやるべきことはたくさん。皆さんに愛される梅林を目指して、少しずつでも前進していきたいですね」と、新しい挑戦に青葉さんの意欲は満点です。
2月・3月の開花時期、6月の梅もぎはもちろん
いつ訪れても楽しめる体験プログラムを用意
現在、秋間梅林では6月の梅もぎ、2月~3月の梅林祭期間中に販売される「食べ歩きチケット」以外にも、通年楽しめる体験プログラムが用意されています。
特におすすめは、自分で収穫した梅を梅割り器で割り、秋間梅林オリジナルのボトルに氷砂糖と一緒に入れてつくる「梅シロップづくり体験」。
「家に持ち帰り、大人の方はお酒を入れて梅酒にしたり、お子さんはシロップでジュースをつくったりしています。青梅から抽出したシロップの美味しさは格別です。もぎたての梅でつくれる6月がおすすめ」と、青葉さん。
また、紅梅の木を削り、煮出した染め液で行う「梅の草木染め体験」も人気。通常は、綿のトートバッグや手ぬぐいなどに染めるが、安中の碓氷製糸工場でつくるシルクでの染め体験も現在計画中。安中産のシルクと梅でつくるピンクのストールはここならではです。
「農泊プラン」や「ボランティア・サポーター制度」など
秋間梅林の魅力を発信する新たな取組にも挑戦
従来の体験プログラムに加え、協議会では新たな取組にも意欲的だ。そのひとつが、農業体験と郷土料理、温泉旅館での宿泊を組み合わせた「農泊プラン」。まずは、県外の方を対象にしたモニターでの実施を2023年11月に予定。
その他、ボランティアやサポーター制度にも力を入れています。ひとつは2017年から実施している「梅の学校」で、授業形式で梅農家の1年を体験するというもの。
そして、2023年6月からスタートしたのが「梅園サポーター」。梅もぎを行う6月だけではなく、一年を通して農家の作業を手伝うことを目的にしています。
「一年に一回しか収穫できない梅を、農家さんは一年のほとんどをかけて大切に育てています。実際の現場を見て、体験して、さらに梅を好きになってもらえたら嬉しいです」と、青葉さんは話します。
お客さんと農家さんの笑顔のために…
いま大事にしているのは「梅林を守ること」
協議会の発足から5年が経過した今(2023年)、今後の目標や大事にしている思いを青葉さんに聞きました。
「梅林をいかに守るかですね。梅林が賑わいを見せていた当時は今の倍以上の農家さんがいて、みんなで広い梅林を管理していました。現在は10人程に減りましたが、人出が足りないことで環境が荒れるのは絶対に避けたいです」
「何より、体験プログラムを用意しても、梅がないと何も始まらないし、それを行う環境が整っていなければ楽しめないですから…。ボランティアさんやサポーターさんの力を借りながら、みんなが笑顔になれる環境の整備に注力したいです」と話し、さらにこうも付け加えました。
「今後は、移住や定住の取組みにも力を入れたいと考えています。ボランティアやサポーターの活動を通して、梅の魅力に惹かれ、一人でも多くの方が梅農家を目指してくれたら嬉しいですね」。
(取材日:令和5年9月)
「あんなか秋間梅林農泊推進協議会」について