広大な敷地に7つのガーデン
四万温泉、沢渡温泉の玄関口にある観光庭園「中之条ガーデンズ」。12ヘクタールの広大な敷地に趣向を凝らした7つの庭園と森やファームのエリアがあり、四季折々の花や植物を楽しめます。
「ローズガーデン」は、異なる雰囲気の7つのセクションに区切られており、歩いていると次々と目の前に現れる新しい庭の展開に心が弾みます。バラだけを鑑賞するのではなく、下草やほかの花々との調和を楽しめるのも魅力的。
「スパイラルガーデン」は、40メートルの渦巻き状の植栽が特長で、遠くからでもパッと目を引くスケール感。そこに植えられた宿根草やグラス類は、中之条ガーデンズの四季の移り変わりを、一年を通じて教えてくれます。
まるで北欧。赤い可愛い家
そんな中之条ガーデンズの一角に、まるで北欧の田舎町に迷い込んでしまったようなゾーンがあります。小さな植物が咲き乱れるナチュラルガーデンの先にある、風見鶏が付いたとんがり屋根の赤い家。「赤い小屋」と呼ばれるその建物に入ると天井や壁などにたくさんのドライフラワーが飾られ、植物の良い香りが漂います。
この「赤い小屋」は、ヘッドガーデナーの森山加南子さんが園内の植物を使い、ワークショップなどを行う体験施設です。6名くらいがちょうどの小さな空間で、アットホームな雰囲気の中、リース作りなどを行います。様々な体験は休日を中心に随時開かれ、中之条ガーデンズのホームページや赤い小屋のインスタグラムで告知されます。
子どもからクラフト好きまで幅広く
ワークショップのメニューは子どもでもできる簡単で親しみやすいものから、少し手のかかるコアなファン向けのものまで難易度はさまざま。
木の板に園内で採取した木の実、種などを貼り付けて作る「ネイチャークラフト」や、紙のお面に植物を飾る「仮面作り」は、30分ほどで挑戦できます。クリスマスシーズンには、ローソクの周りに植物を飾り、そこにロウを流し込む「ボタニカルキャンドル作り」を実施。
時間をかけて作りこむのは「アゲラタムのリース」。スパイラルガーデンから摘んできたアゲラタムの花を、ワイヤーで数個の束にしてパーツを作り、リースに巻き付けていきます。細かい作業ですが無心になれるひとときでもあり、出来上がったときの喜びは格別です。
無農薬の庭づくりを目指して
森山さんは大学卒業後、各地の植物園で働いてきました。さまざまな植物と接する過程で、「無農薬で庭づくりをしたい」という気持ちがどんどん膨らんでいったと言います。
「虫に食われたり、形が不ぞろいになったとしても、それを個性として捉えたい。生態系を大切にし、自然に寄り添ったガーデンに取り組みたい」という森山さんのまっすぐな想いを中之条ガーデンズは受け入れてくれました。2020年、ヘッドガーデナーとして赴任。
「病虫害に弱いバラは農薬を使うのはやむをえません。それ以外はなるべく無農薬で管理しています」と話します。
植物の個性を生かした作品づくり
ワークショップで使う素材も無農薬で育てた植物のみ。
「敏感な方は、農薬のついた植物を手でさわるとかゆくなる人もいます。でも、無農薬なら安心。匂いも本来の植物の香りを楽しめます」と、森山さん。
好きな花をお聞きしたところ、スミレ、アスター、風知草(ふうちそう)という答えが返ってきました。
「スミレは冬の寒さに耐えながら、可憐な花を咲かせるところに惹かれます。キャンドル作りに使います。」
小さな菊のような花をつけるアスターはドライフラワーに、風知草は仮面の飾りやディスプレーに使うといいます。それぞれの花の個性を生かし、作品として蘇らせます。
中之条は歴史ある花の街
「中之条町は花の街。昭和58年の国体で卓球会場になり、選手たちを花で迎えようと街角にプランター花壇を多数設置しました。以来、町民は花づくりに力を入れ、その流れが園内の『町民花壇』につながっています」と、中之条町長で、中之条ガーデンズ園長の外丸茂樹さん。「町民花壇」は、約1坪の花壇に地元の人や企業が花を植栽するゾーンで、100以上の区画があります。
「ナチュラルガーデン」、「大藤棚」、「ふる里の野山」、「ノットガーデン」などの庭園巡り、「リラックスの森」や「ピクニックエリア」での散策と、見どころ満載。
グルメも充実しています。群馬の銘柄豚「上州麦豚」のローストポークの定食、定食のお米は中之条町のブランド米「花ゆかり」、園内で収穫されたリンゴを使ったスイーツも美味です。
進化するガーデン
中之条ガーデンズがあるこの場所は、かつてJAが運営する別のテーマパークがありましたが、閉園後、町が施設を譲り受けて整備を進め、2021年に観光庭園「中之条ガーデンズ」としてグランドオープンしたという歴史があります。年々認知度が高まり、来場者も増えているところです。
「特に春の光景は素晴らしい。山一面の桜と花桃、続いてバラと、次々に花が咲き誇ります」と、外丸園長は話します。町民花壇も年々充実し、大藤棚も年ごとに立派になってきています。
「今もとても良いガーデンですが、10年先が楽しみ」と、進化するガーデンであることを強調します。
賑やかなフェアやイベント
花桃やバラ、宿根草などそれぞれの盛りの季節には、それぞれに合わせたフェアを開催し、期間中はイベントなども行っています。
例えば、園内のリンゴの木が実をつける11月は「りんご畑の収穫祭」を開きます。親子連れにぴったりな「りんごもぎとり体験」、「焼きりんご作り体験」、「木登り体験」、「森のクラシックコンサート」などのイベントが次々と行われているところです。
周囲の里山や田畑を通り過ぎる風に吹かれながら、7つのガーデンの散策とともに「赤い小屋」での体験、そして四季のイベントを楽しんではいかがでしょうか。きっと思い出に残る一日となるはずです。
(取材日:令和5年10月)
中之条ガーデンズについて