INTERVIEW

藤岡さくらやま農泊推進協議会

八塩温泉と桜山山頂を繋ぐハイキング道を活用した
「さくらやまトレイル」で新たな魅力を発信

上毛かるたで歌われる『三波石と共に名高い冬桜』の場所
約7,000本の冬桜と太古から続く名湯がお出迎え

 藤岡市にある標高591mの桜山。その山頂に広がる約47haの桜山公園は、国の名勝および天然記念物に指定された冬桜の名所。晩秋には約7,000本の冬桜が見頃を迎え、紅葉とのコントラストを楽しませてくれます。さらに、年2回開花する冬桜は春にも楽しめ、約3,000本のソメイヨシノと競演し、山全体を桜色に染め上げます。
 また、麓の「八塩温泉」は、古くから「塩の湯口八ヶ所」と呼ばれる名湯。化石海水が湧き出る温泉で、塩分濃度が高いのが特徴。体をじんわりと温め、切り傷・やけど・胃腸病・慢性皮膚病・神経痛・慢性婦人病に効能があると言われています。
 毎年冬桜の開花シーズンには、花見と温泉を楽しみに、県内外から多くの観光客が訪れます。

桜山公園の冬桜

八塩温泉

ハード面だけではなくソフト面の充実も
地域の魅力を高めるためには必要

 桜山公園と八塩温泉を軸に、地域の活性化を目的とした活動を行う「藤岡さくらやま農泊推進協議会」。その発足は2020年7月。発足の経緯や活動内容について、同協議会の堀口会長、事務局の新井さんと外山さんに、話をうかがいました。
 「約4年前、藤岡市の計画で桜山公園が再整備されました。観光資源を磨き上げ、観光客の満足度を上げることが目的でした。こうしたハード面の整備は重要ですが、同時にソフト面についても考える必要があると思いました」と、堀口会長は振り返ります。
 そんな中、堀口会長の心に浮かんだのが、昔から地域で親しまれてきた八塩温泉と桜山の山頂を結ぶハイキング道でした。

藤岡さくらやま農泊推進協議会の堀口会長

新井さん

外山さん

30年前から続く人気イベント「とっちゃなげハイク」が
トレイルランニングを始めるキッカケに

 堀口会長がハイキング道の整備をしていたとき、トレイルランニングをしている人をよく見かけたそうです。
 「話を聞いてみると、この場所はトレイルランニングに適していると言うんです」。
 この地域には30年以上も前から「とっちゃなげハイク」というイベントがありました。これは八塩温泉から桜山公園までハイキングを行い、花見をしながら名物郷土料理の「とっちゃなげ汁」を味わう。さらには八塩温泉を楽しむというものでした。
 堀口会長はこの「とっちゃなげハイク」を思い出し、ハイキングだけではない、新しい楽しみ方ができるのではと思ったそうです。

名物の郷土料理「とっちゃなげ汁」

トレイルランを軸にした一日楽しめるイベント
「さくらやまトレイル」を2021年にスタート

 その後、同協議会ではハイキング道を活用した「さくらやまトレイル」を企画。案内看板の設置やマップの作成、伊勢崎在住でトレイルランニング日本代表の吉野大和選手など専門家の意見を聞きながら、トレイルランやマラニック(マラソンとピクニックの造語)、ハイキングが楽しめるトレイルコースを整備しました。
 第1回のイベント開催は2021年。山頂まで片道7.5kmのコースを往復する15kmコースを実施。2022年の第2回には片道ハイキングと15kmコースの2種類を実施。2023年の第3回には従来の15kmコースに加え、より本格的な25kmコースを新設。
 イベントの魅力を新井さんは、「トレランだけではなく、1日中楽しめることですね。地域での宿泊はもちろん、走った後の入浴サービス、参加した選手にふるまう『とっちゃなげ汁』など地元の特産品郷土料理が楽しめるのも、この地域ならではだと思います」と、話します。

「さくらやまトレイル」の様子

ガイドさんから桜山の魅力を聞きながら、山頂までハイキングします

子どもから大人まで家族で楽しめる
桜山の魅力がまるごと詰まった体験型プログラム

 また、同協議会では「さくらやまトレイル」の他に、自然の魅力に触れることができる体験プログラムを用意しています。
 季節を問わず通年楽しめるのが、山のガイドと一緒にコースを歩きながら、自生する草木や樹木、地形、地域の歴史などについて学べる「ガイドトレイル」。森林組合と地元家具店が行う「木育体験」もおすすめです。山の使命や役割、山での仕事を学びながら、桜山で育ったヒノキを使い家具や小物を作ることができます。いずれも、小さな子どものいるファミリーに人気で、自然が持つ癒しの効果を存分に体験できるのもポイントです。

木の温もりを感じ、遊びながら学べる「木育体験」

大人も夢中になって自分だけの木工作品をを作ります

春と冬の桜や紅葉の時期だけではなく
年間通して出かけたくなるイベントがたくさん

 季節限定で楽しめるのが、1万本の冬桜を目指し、大切に育てた冬桜の苗を植樹する「冬桜の植樹体験(11・12月)」。また、みかん栽培の北限地と言われる、2.5haの園内に約4,500本の木が植えられた桜山観光みかん園での「みかん狩り体験(10月下旬~12月中旬頃)」もおすすめです。新鮮で濃厚な味わいのみかんを存分に堪能できます。
 「春と冬の桜や紅葉の時期はもちろん、体験プログラムに参加することで、年間通して、桜山を楽しむことができると思います。1回訪れて終わりではなく、何度も出かけてほしいですね」と、外山さんは話します。

「冬桜の植樹体験」

「みかん狩り体験」

郷土料理や果物など自然の恵みに触れる
ここでしか出合えない特産品が充実

 こうした体験の他にも、この地域ならではの魅力がたくさんあります。そのひとつが、イベント時にふるまわれる「とっちゃなげ汁」。すいとん(小麦粉を練ったもの)を取って鍋に投げ入れることから、その名前が付いた郷土料理です。イベント以外では、事前の予約により、鬼石観光ホテルで味わうことができます。
 その他、鬼石観光ホテルで提供している「さくらやま弁当」も注目の一品。トレランのお供に最適な地元の食材を使ったおにぎり弁当です。
 お土産には、冬桜の花が咲く頃に旬を迎える「冬桜りんご」や「みかん」がおすすめ。また、これらの果物を栄養価の高い皮までまるごと搾った、季節限定の無添加・果汁100%ジュース「冬桜りんご」と「めざましみかん」も人気があり、その美味しさは自然の恵みそのもの。桜山には、ここでしか出合えない特産品が充実しています。

地元の食材を使った「さくらやま弁当」

無添加・果汁100%の「冬桜りんごジュース」

山を守ることは、山が使われるということ。
藤岡さくらやまをより楽しめる取組に力を入れて

 2020年に「さくらやまトレイル」を開始し、回を重ねるごとに参加人数が倍になるなど注目を集める中、今後の目標について「藤岡市を代表するイベントに成長させたい。そして、さくらやまトレイルをきっかけに、この地域の魅力を知ってもらえたら嬉しいですね」と、堀口会長は話します。
 さらに新井さんは、「年々人口が減少する山村地域を守っていかなければいけないと思っています。山を守るということは、山が使われるということ。山に来てもらって楽しんでもらえる取組を、さらに充実させていきたいと思っています」と、地域の現状を踏まえつつ、未来への思いを口にしました。

(取材日:令和5年10月)

「藤岡さくらやま農泊推進協議会」について

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