INTERVIEW

民泊 志門

養蚕体験に茶摘み・手もみ茶体験
古き良き伝統産業の魅力を再発見

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料理人、養蚕、お茶農家。多彩なオーナーが営む農家民泊

 「西の西陣、東の桐生」と言われ、古くから「織物のまち」として栄えた群馬県桐生市。1日中安定した明るさ(採光)を確保でき、織物生産に最適なノコギリ屋根工場が今なお残る住宅街に、「民泊 志門」はあります。オーナーは、隣接する「もつ亭 志門」で料理人として腕を振るう高川憲之さん。エンジニアとしてアメリカで働いている時にスイス人の奥様と結婚し、お子さんの教育のためにスイスに移住。「日本食をスイスに広めよう」と、うどん・そば打ちの技術を習得し、ローザンヌの一流ホテルでシェフを務め、レストランを経営したという異色の経歴の持ち主です。
 2019年に「お店(もつ亭 志門)のお客さんが泊まれるように」と民泊をスタート。2020年から養蚕や桑茶、梅田茶の生産にも取り組み、グリーン・ツーリズムインストラクターの資格を取得。宿泊者だけでなく、希望する人にさまざまな農業体験を提供しています。

客室は、日本らしさ溢れる和室

愛情を持って蚕を育てる

 「ここでは年2回、晩春と晩秋にあわせて約6万頭のお蚕を飼育しています」
高川さんが案内してくれたのは桐生市のお隣、太田市郊外にある旧農家の納屋。取材に訪れた9月某日、納屋の2階には「回転まぶし」と呼ばれる、蚕が繭を作るための格子状の箱がずらりと並び、真っ白な幼虫がお気に入りの部屋を探して這い回っていました。「糸を吐く準備ができたお蚕をまぶしに移す作業を、上蔟(じょうぞく)と言います。本当は今日行う予定だったんですが、お蚕が糸を吐きたがっていたので急遽、昨日の夕方に作業を行いました。生き物なので、待ったなしなんですよ(笑)」
 「壮観ですよね」と目を輝かせていたのは、養蚕の作業を手伝いに東京から訪れていた女性。養蚕体験は3度目のリピーターだと言います。床に落ちてしまった蚕をまぶしに戻してあげながら、「一生懸命糸を吐いている姿を見ると愛着が湧いてきます。なかなかできない体験で楽しい」と話してくれました。

タイミングが合えば、養蚕体験も

繭をつくる準備をする蚕

消えゆく養蚕文化を継承したい

 養蚕体験ができるのは6月と9月。桑畑から桑を刈り取ってきて蚕に与える「給桑(きゅうそう)」作業がメインですが、タイミングが合えば「上蔟」や、まぶしから繭を取り出す「収繭(しゅうけん)」も体験できます。
 日本の絹産業を牽引してきた群馬県の養蚕業ですが、化学繊維の台頭や生産者の高齢化によって、現在太田市内で養蚕を行っているのは高川さんの他にわずか3軒となっています。「蚕は生き物なので気が抜けないし、技術が必要とされる。勉強のしがいがありますね。この優れた養蚕文化を継承することに価値を感じています」と、高川さんは養蚕の魅力を語ります。

健康茶としても注目!桑の葉でお茶づくり

 養蚕場から車で約5分のところには、およそ5,000㎡の桑畑があり、養蚕用に加えて桑茶に使う桑を栽培しています。
 桑茶作りは葉の収穫からスタート。大人の背丈ほど成長した桑の枝を電動剪定鋏で切り、枝から葉っぱだけを摘み取ります。「上の柔らかいところを摘むと甘みが出ます。いろいろな作り方がありますが、私は最初に萎凋(いちょう)といって、葉を少し乾燥させてしぼませます。それを刻んで手でもみ、熟成させ、高温で乾燥させるとフルーティーな香りになるんです」と高川さん。
 淡い黄金色の桑茶を試飲させていただくと、ほんのり甘く、爽やかな飲み心地。ビタミンやミネラルが豊富で健康効果も注目されています。桑の葉摘み・手もみ製茶は、5月から10月頃まで体験できます。

桑の葉をつんで、製茶体験

爽やかな香りに包まれる手もみ製茶体験

 高川さんは桐生市梅田町にある茶畑で、梅田茶の栽培にも取り組んでいます。寒暖差が大きく茶葉の栽培に適した梅田町では、昔は多くの農家が自家用にお茶を栽培していました。ピーク時に比べると生産農家の数はめっきり減りましたが、高川さんも所属する「梅田茶生産組合」が、地元の味を守ろうと活動を続けています。
 栽培した茶葉は工場で製茶するのが一般的ですが、高川さんはすべて手もみでお茶にしており、新茶のシーズン(5月上旬)にはお茶摘み・手もみ製茶体験を提供しています。
 摘み取って蒸した茶葉は、下から熱を加えて乾燥させる焙炉(ほいろ)という作業台の上に乗せ、揉みながら細い針状に整えていきます。「手もみにすると、機械で作ったものとは香りが全然違うんです。手間をかけた分だけ、美味しいものができる。初めての人でも美味しくできますよ」と高川さん。子どもからお年寄りまで幅広い年齢層が楽しめるのも魅力の一つです。

焙炉(ほいろ)の作業は、この台の上で行います

少しでも多くの人に体験の機会を提供したい

 「民泊 志門」を利用する約半数は、外国人旅行者です。宿泊場所にも、マップや周辺のおすすめスポットが書かれた案内が、英語で翻訳されて置かれています。英語が堪能な高川さんは、「色々な場所から訪れるお客さんとの交流も楽しみのひとつ」と話します。養蚕やお茶づくりに興味を示す外国人も少なくないそう。
 「養蚕と桑畑・茶畑の管理に追われてしまい、体験を希望する人がいればその都度対応しているのが現状です。今後は、プログラムの企画や告知にも力を入れ、少しでも多くの人に体験してもらえる体制を整えていきたい」と展望を語ってくれました。

もつ亭志門の隣の「民泊 志門」(外観)

スイスでシェフをしていた高川さん

(令和6年9月取材)

「民泊 志門」について

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