INTERVIEW

観光農園あかぎおろし

赤城南麓の爽やかな風の中で
ブドウやサクランボをもぎとろう

8ヘクタールの畑に、11種類の季節の果実

 白い袋を実にかぶせたブドウの木が、はるか遠くまで立ち並んでいます。
 「わー、広い!」、「木がいっぱいだね」と、うれしそうに駆けまわる子どもたち。袋についている小窓から実を覗き、「これ、甘そうだよ」、「色がいいね」と、ほほ笑みあうカップルの姿も…。
 ブドウ、リンゴ、モモ、サクランボ、栗、柿、梨、スモモ、ブルーベリー、ミカン、洋ナシ。赤城南麓に広がる8ヘクタールの畑で、季節の果物を育てる「観光農園あかぎおろし」。  
 とれたてのみずみずしい果実を直売所で販売するほか、訪れた人にもぎとる楽しさを味わってもらおうと、春はサクランボ、秋はブドウの収穫体験を行っています。ブドウ棚の下で地場産の肉や野菜を焼いて食べるバーベキューも好評です。

園内の直売所では、とりたてのブドウが販売されています

ブドウ棚の下で、地場産の肉や野菜を味わうバーベキューも好評です

赤城を盛り上げよう。造園会社が農業に挑戦

 「赤城南麓の耕作放棄地を利用して果樹園をつくろう。そして、赤城の観光を盛り上げよう」。
 「昭和造園土木株式会社」会長、石橋照夫さんの発案であかぎおろしは生まれました。造園会社が“初めての農業”を手掛けることになったのです。
 造園の仕事をするなかで荒れた耕作放棄地に数多く出会い、なんとか活用できないか、農業で赤城南麓を盛り上げられないかと考えたのがきっかけです。
2012年からプレハブで営業をはじめ、現在の直売所ができたのは翌年の2013年。2015年には「あかぎおろし総研合同会社」を立ち上げ、より一層、果物づくりに力を入れることに。
 「果物の販売だけではネットで用が足りてしまいます。多くの人にこの地へ足を運んでもらうために、収穫体験や食べ放題などのメニューを充実させていきました」と、2代目社長の石橋修一さんは話します。

可愛らしい外観が目を引く直売所

2代目社長の石橋修一さん

旬の美味しい品種を「種なし」で

 ブドウ収穫体験は、8月下旬から10月下旬まで。これだけ期間が長いのは、ブドウの品種を50種類も育てているためです。珍しい品種も多数あります。
 「その時期に一番美味しいブドウを収穫してもらいます。黒くて大粒な『藤稔(ふじみどり)』や、実に甘みが詰まった『クイーンニーナ』、皮ごと食べられる緑色の『ゴールドフィンガー』などは特に人気です」と石橋社長。
 あかぎおろしのブドウには、一切種がありません。ジベレリンという植物ホルモンによる処理を行うためです。
 「種をかじったときのガリっとした食感は嫌ですよね。種を気にせずに済む、食べやすさを考えました。手作業で一つひとつのぶどうの房に処理を行うのは手間と時間がかかりますが、お客様に喜んでもらうことが一番ですから」と、園長の阿佐美直人さんは言います。

園長の阿佐美直人さん

種なしブドウは、お子さんでも安心して食べられます

宝探しのように甘い房を見つけよう

 ブドウの収穫体験は、次のような手順で行います。まず、受付を終えたお客様をスタッフが畑に案内します。収穫できる品種には「収穫できるよ!」の札が付いていので、それを目印に。ブドウの実にはすべて袋がかぶさっており、袋の小窓から実の様子を見て、好みのものをもぎとります。まるで宝さがしのようです。
 「美味しいブドウの一番の基準は色。色が濃いものは実が甘いのです」と、阿左美園長は説明します。
 また、明るく風通しの良いところにあるブドウも狙い目だそうです。
 ブドウの棚は1メートル80センチ。子どもには高いので、踏み台を用意してあります。ママやパパが子どもを抱っこしてもぎとる姿も微笑ましい光景。収穫したブドウは、スタッフが悪い実を取り除き、量り売りします。

収穫できるよ!の札を目印に、パパと協力してブドウをもぎとります

袋の小窓から実の様子を見て、美味しいブドウを探します

植物がどんな風に実っているかを知る

 予約制で行っているプログラム「30分カゴ盛り食べ放題」も人気です。もぎとり体験は付いていませんが、3種類以上のとれたてブドウを好きなだけ食べられるよくばり企画です。
 6月中旬にはサクランボ狩りを楽しめます。こちらは30分間、自分で木からもぎとったサクランボが食べ放題です。
 「ブドウやサクランボってこんな風に実っているんだ、というのを初めてご覧になるお子さんもたくさんいます。虫を見つけたり、自然の心地よい風に吹かれたり、畑を思い切り楽しんでもらえれば」と、石橋社長。
 参加者からは、「とれたての美味しさは格別」、「スーパーの果物とは味が違う」といったうれしい声が寄せられています。

甘くてジューシーなサクランボをお腹いっぱい頬張ります

ボランティアでワイン用ブドウの収穫体験も

 あかぎおろしでは、2018年からワイン用のブドウ品種を育て始め、2020年から自社農園で栽培したブドウを100%使った「前橋産葡萄のワイン」の販売を始めました。
 「メルローと山ぶどうを掛け合わせてできた富士の夢、リースリングと山ぶどうを掛け合わせてできた奇跡の雫といった品種を育てています。病虫害に強いはずなのですが、今年はかなりやられてしまいました。まだまだ勉強していかなければ、と身を引き締めました」と、石橋社長。
 ワイン用のブドウの収穫は、3日間ほどで5トン以上とります。スタッフだけでは手が回らないのが悩みのタネです。
 「今後、お客様からボランティアを募ってワイン用ブドウの収穫体験を始めたいと考えています。参加した方には、でき上がったワインをプレゼントする。なかなか夢があると思いませんか」と、石橋社長は言います。
 赤城南麓の果樹園では、次々と楽しい企画が持ち上がっているようです。

直売所のワインコーナーには、自慢のワインが並びます

(取材日:令和5年10月)

観光農園あかぎおろしについて

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