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始まりは棚田のオーナーのために
夏は緑、秋は黄金色に一面が染まる沼田の「石墨棚田」。ここは、農林水産省の「つなぐ棚田遺産」に選定されています。実りの時期には、昔ながらの「はって掛け(はさ掛け)」による天日干しの光景も見られます。束ねた稲を棒などにかけて、太陽の光と自然風によって乾燥させるのです。
その広大な棚田を見下ろすように建つ「農泊 精芳園」。築150年以上という歴史ある養蚕農家の木造家屋を受け継いだ田村精一さんと、奥様の美智代さんが経営しています。
棚田は、地域住民の手で守られているだけでなく、オーナー制も設けています。農業体験とは縁のない都会のオーナーたちが訪れ、5月は田植え、夏は稲鑑賞会、秋は稲刈りや収穫祭など、年4、5回のイベントが開かれます。
「オーナーの方たちが宿泊する場所がこの辺りにはなく、日帰りする方がほとんどでした。そんな方々の宿泊先を作りたいと思ったのです」と精一さん。「私も昔からグリーン・ツーリズムに興味を持っていました」と奥様の美智代さんもすぐに同意。こうして2018年、精芳園が生まれました。
ご主人が一人でリノベーション
白壁に黒い柱が印象的な建物の外観は、長い歴史を感じます。3階建てですが、「1階だけでかなりの広さがあるので、2階、3階は使っていないんですよ」と精一さん。
中に入ると、真っ白な壁にフローリングの床。おしゃれなリビングセット。天井ではファンが回っています。キッチンを覗くと、最新型のシステムキッチンが設置されています。外観は「和風」、室内は「洋風」と、内外で異なる雰囲気を楽しむことができます。
「大工は入れず、主人が一人でリノベーションしました。ホームセンターで床板や素材をすべて買って来て、作業は2,3カ月かかったでしょうか」と美智代さん。これには驚きました。まるで一流の大工が作ったような出来栄えなのです。
客室は2カ所あり、1つは2段ベッド2台と作りつけのベッド2台のある洋室。もう1つの部屋にも2台のベッドが設けられています。最大で7人まで宿泊することができます。

客室内の様子

精一さんが一人でリノベーション
広い敷地内は宝の山
広い敷地内を散策してみましょう。四季折々の野菜や果実が植えられています。ブルーベリーや栗、柿、レモングラスやセージなどのハーブも多種多様です。ハーブの利用方法から、山道で熊と出会った話、地域の生態系の話まで、精一さんが面白おかしく語りながら、散策のガイドをしてくれます。
家の周りには井戸も2カ所残っています。飲水はできないため、風呂水として使うそうです。「水道水とは違ってカルキ(消毒剤)が含まれていないから、肌触りが滑らかでしっとり。温まりもいいんですよ」と美智代さん。
徒歩5分の場所には経営しているリンゴ園があるので、秋にはリンゴ狩りを楽しめます。また、車で数十分のところにはサクランボ園もあります。自分でもぎ取って食べる果実の美味しさは最高。また、近くの山にオーナーと一緒に登ったり、川遊びをしたり、さまざまな体験をできるのがこの宿の最大の特長です。

経営しているリンゴ園

リンゴ狩りを楽しめます
人気のBBQと新鮮果実の加工体験
宿泊代には、朝食と夕食も含まれています。料理上手な美智代さんと一緒に、とってきた野菜を使って調理するのも楽しい体験です。「新鮮な素材は最高のごちそう。掘りたてのジャガイモをふかしてバターを乗せただけで、とびきり美味しい逸品になるんですよ」と美智代さん。
宿泊代にプラス1,000円すれば、屋外のBBQコーナーで牛や豚、鶏肉、新鮮野菜を焼いて食べるコースに変更することができます。
女性や子どもたちに人気があるのは、果物の加工体験です。栗を拾って、イガから取り出し、甘露煮にしたり、ミキサーでモンブランにしたり、ブルーベリーやサクランボでつくったジャムをパンに塗ってパクリなんて体験も。美智代さんの特技はアップルクランブルづくり。とりたてのリンゴを煮て、クッキー生地を砕いたものを上に乗せ、オーブンで焼けば出来上がり。「アップルパイよりも手間がかからず、簡単で美味しい。小さなお子さんでも挑戦できます」と教えてくれました。

みんなでアップルパイづくり

左:バンドルズ(ラベンダースティック) 右:栗とサクランボを砂糖漬けしたもの
ホタルやイルミネーション、お花畑も
宿の前には、精一さんと美智代さんが荒地を整備して完成させたお花畑「いしずみ花クラブ」が広がっています。コンセプトは「一年中、いつ見ても花が絶えない場所」。工夫してそれぞれの季節の花をこまめに植え替え、育てているのです。「好きでやってることですから」とほほ笑みながら、「お客様と一緒に、お花畑で摘んだ花を使ってリースやアレンジメントをつくるのも楽しくて」と美智代さん。
まるで親戚の家に泊まりに来たような、アットホームなおもてなしが魅力の「農泊 精芳園」。6月中旬から7月上旬には棚田でホタルまつりが行われ、11月中旬からクリスマス前までは棚田のあぜ道にLEDライトが設置されて、イルミネーションが輝きます。宿の周りも、いつ訪れても新鮮な驚きにあふれています。

いつ見ても花が咲いている「いしずみ花クラブ」

美智代さん手作りのリース

農泊 精芳園の外観

リンゴ園の外観
(取材日:令和6年9月)
「農泊 精芳園」について